カザマアヤミ先生が描く少女漫画的世界 -ボクの創る世界
ちょこっとヒメのカザマアヤミ先生が描くプラトニックな世界。
ちょこっとヒメが好きな私にとって当然買いでした!
やはり本屋にちょくちょく行くのが買い逃しのないコツというのを改めて認識しました。
■幻燈師
「景色」を想像し、「幻燈機」を通してその「想像世界(イメージ)」を具現化することが
できる『幻燈師』と呼ばれる人たちがいました。
もっと具体的にいうと、周りの景色を自分が思い描くイメージに変える事ができるのです。
イメージを具現化する能力は才能しだいで、誰にでもなれるというわけではないのですが、
才能があったからといって、それを磨かなければなりえる事ができない『幻燈師』。
だから、幻燈師見習いは学校へ行き指導を受けるわけなんです。
人の持つイメージっていうのは曖昧です。
大まかには理解していたとしても細部まで完璧に再現するのはなかなかできる事じゃないです。
だからでしょう。最初の話の主人公である『仲原律己』が幻燈しているのは空だけなのです。
空なら、構成が『雲』『太陽光』くらいなので初心者にはもってこいでしょう。
皆さんだって何も見ないで空くらいは描けるのと一緒ですね。
■律己の先生は…
なかなか幻燈が思うように行かない律己に熱心に教える女性の先生…
だったと思っていたのですが、
親父かよ!!
女の子だと思ったら男だったと分かったショックは今まで数え切れず…。
「だがそれがいい」とか「むしろ男の子の方がいい」とか「どっちでもいい」
とか、私は着いていけませんからね!
とはいうものの…
中性的な人間にも惹かれることがあります。『HUNTER×HUNTER』のクラピカです!
確かに、男だとしても女だとしても好きなキャラなのは間違いないです。
さてこの人はその外見もあって、大人気幻燈師なんです。
大人気なのはいいことなんですが、引っ張りだこで忙しすぎるのも考えものですよねぇ。
■女の子
同じ幻燈師見習いの『初見柚流』も律己と同じで進級試験に合格できないでいました。
そんなわけで、数日間放課後で一緒に練習することになります。
かわいい女の子と一緒となれば、やる気は大幅にアップしますよねぇ。
しかし、律己のやる気はあがらないままでした。
そんな彼も家に帰った後何気なく幻燈してみたら、
柚流を幻燈してしまいました!
人間の幻燈は難しいので律己にはまだ出来ないレベルのものです。
律己は知らず知らずの間に、柚流の事が気になっていたのです。
これも一目惚れの一種なのでしょうか。
表面的な心ではどう思っていようが、幻燈するイメージには嘘はつけないんですよねぇ。
だから、邪な気持ちがあったり集中できないと幻燈はうまくいきません。
ところで律己は意識せず彼女が幻燈されてしまうので、
柚流の前では恥ずかしくて幻燈なんか到底できません。
絵を描ける子が好きな異性を絵に描いてみるけど本人にはそれを見られたくないのと同じですね。
自分が相手のことをどう思っているかなんてあんまり知られたくない…というのはよくあります。
それがたとえプラス面だとしても『恥ずかしいから』とか『相手にどう思われるか不安だから』
という理由で本当の自分の気持ちを隠す事はよくあることですよねぇ。
■柚流の願い
柚流は自分の幻燈で人を楽しませたい・和ませたいという気持ちをもって幻燈をしています。
それは彼女の他人への思いやりから来ているものです。
ある日、学校の窓から律己と柚流は夕日の綺麗な空を一緒に見上げます。
その後日に、柚流はその空をイメージした幻燈を見事にこなして、進級試験に合格します。
そんなわけで進級試験に合格できていないのは律己だけになってしまいました。
その事で律己は少々落ち込みます。自分が進級試験に合格できないからではありません。
柚流と一緒に放課後に残って過ごした日々が終わってしまう事への落胆です。
そんな状態だったからでしょう。律己は、柚流にこんな事をいいます。
「あれって俺の発見だろ? それやるなんてちょっとズルくねぇか?」
この言葉で少し傷ついた柚流。
人のアイデアを使い、それを指摘されたから涙したのではありませんよ。
彼女は、試験に合格したいから幻燈をしたのではありません。
律己に幻燈を見てもらって、感動を分かち合いたい、楽しんでもらいたい…
きっとそんな気持ちで幻燈をしたけど、律己にはそれが伝わらなかったから悲しんだのです。
隠れて涙する柚流を見て、律己が今度は軽く落ち込んでしまうんです。
律己は、柚流の成長ぶりが羨ましかったんですね。
彼女の幻燈は初期に比べて見違えるようにうまくなりました。
でもあまりにも凄くて、律己が遠い存在に思えるようになったのが寂しかったんでしょうね。
だからついついあんな事を口走ってしまった彼だったのです。
■幻燈師
ここまでで紹介したのは『キミに魅せる空』で、
他にも『ラストプラトニックブルー』『ちびっこクロスゲーム』『ボクの創る世界』
が収録されています。どれも幻燈師をテーマにしたものです。
少年少女のスレ違う想いと、想いを具現化する幻想というテーマで構成される
この世界観はとても素敵です。ジャンル的には少女漫画だと思います。
ちょこっとヒメの癒しモードとは違いますが、展開的に修羅場になっても
全く黒さを感じさせないのがカザマアヤミ先生の描き方のうまさだと思います。
だから安心して読める青春ストーリーなのだと思います。
[関連リンク]
カザマアヤミ先生のサイト
画像(C) カザマアヤミ / ソフトバンククリエイティブ
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