見上げる事を覚えていく少女の物語 -そら☆みよ1巻
素晴らしい…。
この一冊は実に素晴らしかった…。
久々に良作を読んだ気がしました。
主人公は女の子
彼女の名前は、「水谷 湊(みずたに みなと)」。
なんてことはない、特に目立たない女の子。
高校受験…
高校を仲良しの友達達と一緒に受けて、一緒に受かって、
一緒に高校生活を楽しむはずでした。
だが、結果は…4人の友達グループのうち湊だけ不合格。
これには流石に応える湊…。
だがそもそも友人とあえて一緒に同じ高校を受けるのは間違いだと私は思います。
中学時代に仲良くなった友達と離れたくないから高校も一緒に通いたい…。
気持ちは痛いほど分かります。
春…
新しい出会いと新しい生活が始まる心躍る季節…と云えば聞えはいいかもしれませんが
実際は知らない人と1から始めなきゃいけないから鬱と、
どこかのこなたさんが云っていた正にその通りです。
高校に入るとほぼ全員が知らない人…
その人達とうまくやっていけるかがとても不安になります。
その不安通り、湊は入学してから結構経った今でもクラスに馴染めないでいました。
そればかりか、
仲良しグループと一緒の高校に行けなかったショックをいまだに引きずっている始末。
このままでは湊の高校生活は灰色のまま終わってしまう。
そんな時でした…
無理やり天文部に入部させられそうになる。
4人いないと部活として認められないらしく、現在3人の彼らは部員を探していたのだ。
既に3人が歓迎会を始めようとする中、湊は拒絶する。
星なんか全然興味ない、と
だいいちここは東京だから星なんかどうせあんまり見えない、と
東京の夜の空に何が見えるというのか?
期待するものなんてない
彼女はそう思い込んでいた。
だがどうだろう。天文部の3人に言われて見上げた空は輝く星で埋め尽くされていた。
これが本当に東京の空なのか。
彼女は、【東京の空】というだけで希望を持っていなかった。
この高校は広い敷地を持っているため、
ちょっと周りが暗くなるだけで結構星が見えるというのだ。
「はじめから諦めて空見上げねー奴には見えない」
と云われるが正に湊自信のことを物語っていた。
【東京の空】だから【星は見えない】と希望を持てなかった事…
【行きたくない高校】だったから【楽しくない】と希望を持てなかった事…
どちらも同じ事だ。
このままでは…
ずっと何も見えないままで終わってしまう…
予想以上の夜空の星…
そして彼等の言葉に感動した湊は入部を決意する。
湊がこの高校に入って初めて楽しくなる予感がしたのだ。
そうなんです。最初は不安の方が大きい新しい生活も月日を重ねていくうちに
かけがえのないものになっていく。
最初うまくいかないだろうと思っていた人とも話してみると意外と意気投合したりと、
気付けばそこは自分にとってとても大切な存在になっていく。
別れがあれば出会いがある。
ただ、自分から輪の中に入ろうとする努力が必要なのである。
天文部のなかの人
天文部3人(実際は湊が入ったので4人)は実は学校…いや学外まで有名な3人だったのだ。
女装して謎の踊りをする部長や机と椅子を常時持ち運んでいる女子部員…。
そんな奇行が災いして噂はどんどん広まってしまっている現状なのだ。
そんな3人が所属する天文部。
知られちゃいけない!
自分が天文部だと知られちゃいけない
そう心に決める湊であった。
要はその時の周りの人達によって話を合わせるようなものなのです。
自分が天文部に所属したい気持ちは変わらないけど、
変人達の仲間だと思われたくない…。
この相反する2つの事で後に彼女は酷く後悔する事になります。
家が遠いのは致命的
天文部といえば活動時間は星が見える時間…つまり夜に活動する事になる。
実は湊は学校まで片道2時間以上かけて通っているのだ。
そんな時、「今日の部活は夜8時から」と告げられる。
彼女は肝心な事を忘れていたのだ。
家が遠いから天文部は無理だと諦めかける。
湊「やめよう」
残念…だけどしょうがない。
せっかくがんばろうと思って入った彼女にとっても辛い決断であった。
夜の8時…
3人が集まっている中で湊はその事を切り出す。
「しょうがないよね」
「家が遠いんじゃどうしようもないよね」
普通ならそういう答えが返ってくると思いますよねぇ。
実際湊もそう思っていただろう。こればっかりはどうしようもないと…。
だけど返って来た答えは、
「じゃ屋外に変更」
へ?
事情話したのに分かってくれてない!?
そう思っていると…
バイクに乗せてもらって湊を家まで送って云ってくれるというのだ。
その帰路に空を見上げるのが部活になるというわけなのだ。
部員の為ならここまでする。
彼等の仲間意識の強さに湊はまた感銘をうける。
『馴れ合いが嫌い』…そう思う人もいるでしょう。
だけど彼等の仲間を大切にする気持ちは本物だった。
仲間であればそこに利害を気にしている暇などない。
たった4人の部活。
だけど3人は幼馴染同士。将来への凄い志も持っている。
そんな3人に迎え入れられた彼女は、決して人数合わせのお飾り人形ではなかった。
彼ら3人にとってかけがえない仲間であったのだ。
まとめ
と云うわけで2話までの話をレビューしてみましたがこの漫画は全8話。
期待はずれの学校に入り、その事をずっと引きずって下ばかり向いていた湊。
そんな彼女に見上げることを教えてくれた天文部3人との出会いの部分です。
彼等のおかげで彼女は変わっていきます。
そんな彼女の更に波乱万丈の話は中間から後半の話に続きます。
そら☆みよという題名の由来も本編で明らかになります。
1巻完結が私的にとても残念ですが、とてもいい感じにまとまっていて
素晴らしい1冊でした。
画像(C) 梅川和美 / 双葉社
そら☆みよ (アクションコミックス) | |
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